★本屋、減りすぎ問題。【vol.11】

どうにかできないから閉まるんだろうけど、ほんとどうしたらいいんでしょうね。「ビジネスの前に文化であるのに」って言ったら、甘いのかなあ。
近藤あゆみ 2024.03.22
誰でも

お彼岸の墓参りで久しぶりに母とおしゃべりしてたら、地元最寄駅近にあった本屋が閉店したという話を聞いた。

そこは私が地元を出てからできたものだったので馴染みはないけど「駅からの帰りにサッと寄るのに便利だったのに」と母は言う。実家にいちばん近い商店街の本屋はとうの昔になくなっている。これから地元で本屋に行こうとすると、徒歩で20分以上はかかる場所まで行かなくちゃいけない。しかも全然生活圏内じゃない、真逆エリアだ。本好きの母と一緒に「困ったねえ」と言い合う。

そういえば私の住む中目黒でも、駅前の「中目黒ブックセンター」が今週末で閉店するそうで衝撃を受けたばかりだった。生活必需店だったのでなくなると大変に困る。ほんと困る。
駅の目の前にスタバ併設の蔦屋書店があるけど…嫌いではないし「本好きの人がセレクトしてるな」と思わせる棚もあるけど、決して「街の本屋さん」としての役目を担うお店ではないんだよね。
125年の歴史を誇る「新高堂書店」もついに閉店してしまったし、近くで残るは池尻大橋駅の「あおい書店」だけか…。

子供の頃いちばん通いつめてたのはその商店街の本屋さんだった。マンガのコーナーにはいつだって近所の小学生たちがたくさんたむろしていて、男子などはがっつり座り込んで立ち読み(?)してたなあ。マンガも小説も参考書もそこで買った。あらゆる年齢のご近所さんたちが通う普通の本屋さん。

ああいうお店がなくなると、地元小中学生はどこに通ったらいいの?毎週ジャンプ買いに走ったり、マンガ立ち読みしたり、ドリル買ったり、買い物帰りに親に本ねだったり、そういうのどこでやるの?そもそもやらないの??

大人はまだね、「じゃあ大きめターミナル駅の街で買うか」ってなるんだけど。でもそういう大型書店すらも、すごい勢いでなくなってるよね。

いちばん本屋の衰退激しいのは渋谷だと思ってて、最初の衝撃はどデカい「ブックファースト」がH & Mになった時(いつの話だ)。その後駅地下に移転したけどそれももうない。渋谷警察目の前、歩道橋の真下にあった「山下書店」も品揃えが好きだったけどなくなった。パルコブックセンターもなくなり、東急百貨店7階の「丸善」もビルごと失われ、Qフロント上の本屋さんすらなくなるのでしょ。もう渋谷は井の頭線近くの「啓文堂書店」に頑張ってもらうしかない…。

ターミナル駅でいうと、私はアトレ恵比寿の有隣堂、そして頼りになる大型書店の街・新宿と池袋で一気に買ったりしてる。

でもそれとは別にやっぱり、近所で「あ、これこれ」って気安く買いたいですよね。学校帰りの子供にも、そういうとこで思いがけない本との出会いをして欲しいよね。

本屋さんは人々の文化と暮らしのために地元に複数なくてはならないものだと思ってるので、「本が売れないから仕方ない」「電子で読めるし」という話だけでは片付かない弊害が生まれるような気がする。埋まらない穴があきっぱしになって、それが知らない間にじわじわみんなの毎日を侵食していくような、そんな恐れを勝手に持ってる。

いっぽう、荻窪のTitileのような独立系の小さなセレクト本屋さんは地道に増えてる印象があって、とても喜ばしい。今後はそういう本屋さんを地道に巡っていきたい。地代が高そうだから難しいかもだけど、中目黒にも誰か出店しておくれ。


というわけで谷中霊園からの帰り道、池袋で途中下車してジュンク堂へ行った。アイラブ池袋、まだ本屋さんが頑張ってる。

最近読んでその文章の美しさと博識ぶりに陶然となった小津夜景さんのエッセイ「ロゴスと巻貝」を、母に贈りたいと思って買う。若い女性店員さんのラッピングがすみずみまでビシッと美しく、職人技!と感動した。

自分用には同じ小津さんの漢詩にまつわるエッセイ「いつかたこぶねになる日」を探す。文庫版ならどこでも置いてあるけど、彼女の著作は単行本で欲しいなと思うのになかなか見つからない(ネットで買うと負けた気がするのであくまで店で探す)。

果たしてジュンク堂にもなく、しょんぼりしてそのまま近くの三省堂書店に行ったら、なんと一冊だけ置いてあった!こういうのがほんとに楽しいよねー、本屋巡りって。

お風呂で読み進めてたから帯がヘロヘロになってしまった「ロゴスと巻貝」

お風呂で読み進めてたから帯がヘロヘロになってしまった「ロゴスと巻貝」


目的のものだけ買うならネットでもいいかもだが、紙の辞書をひくのとおんなじで、「お目当のもの以外に目がとまり、全然予定になかったものに惹かれる」という出会い方は暮らしの中ですごくすごく大切だと思うのです。本屋さんって何ひとつ買わなくても、その空間に入るだけで満たされる何かが確かにある。あらゆる人の思い、あらゆる世界からの呼びかけがそこに集っている。見るべきもの、学ぶべきもの、くだらなくて役に立たないもの。邪悪なもの淫靡なもの。それらが自由に手に取れる!と想像しただけでワクワクゾクゾクする。
だから人類のために、これ以上なくならないで欲しい。

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