★自分に加点できない私たちは。【vol.26】

あけましておめでとうございます!今年も「よそみのあゆみ」をよろしくお願いいたします。今年はもっとマメに配信するぞー!
近藤あゆみ 2025.01.09
誰でも

ドッグイヤーだらけのBUTTER

年末から、ものすごく久しぶりに柚木麻子さんの「BUTTER」を読み返し中です。「木嶋佳苗の事件を題材にして描かれた小説」ということだけは覚えてるけど、あまりに久しぶりなので細かな内容を失念してる。

それでも、本の小口(断面のところ)を見てみるとたくさんのドッグイヤーがあるのが分かります。私は刺さる言い回しや文章があると反射的にページの端を三角に折るクセがあるので、これが大量にあるということは色々と心に響いた本なのだろうな。
(ちなみにこの小説、いまイギリスでものすごく売れているそう。そのニュースを知る直前に再読し始めたので、タイミングに驚いてる)

まだまだ最初のほうなんだけど、いきなりこんな文章にぶち当たってウウ、と唸りました。

「どんな女だって自分を許していいし、大切にされることを要求して構わないはずなのに、たったそれだけのことが、本当に難しい世の中だ。取材を通して知り合う、成功者と呼ばれる女性ほど、それが顕著に表れている。皆、何かに強く怯え、ストイックに我慢し、異常なほど謙虚で、必死に自分を守ろうとしている。里佳自身、いかに他人から褒められようと、仕事で評価されようと、自分にあらゆる面で満足点を与えられないでいる。」
柚木麻子「BUTTER」

本当にこれじゃん。日本の女たち、まさにこれ。

成功者でも成功者じゃなくても、私たちはなぜこんなに自分に加点できないんだろうね。どんなに褒められても「いやいや、でも…」と、その何倍もの減点ポイントを自ら見つけ始めるんだろうね。

世の中が(社会のシステムごと)ことさら女に厳しく、時に意地悪ですらあるのは知ってるけど、それにしたってもう少し「自分を許していいし、大切にされることを要求して構わない」とは思う。まあ、謙虚で平身低頭の方が嫌われず、若干おびえてるくらいの方が安全だったりもするんだけど…これが習い性になるのは、あんまいいことではないですよね。謙遜と自虐も度が過ぎると自分に向かう刃になったり、鉄の檻になったりする。

文庫も出てるけど、単行本はカバーがぬめっとしていて紙も心なしかしっとりしてて、手ざわりを完全にタイトルに合わせてきてるので、おすすめです。

文庫も出てるけど、単行本はカバーがぬめっとしていて紙も心なしかしっとりしてて、手ざわりを完全にタイトルに合わせてきてるので、おすすめです。

私もっと背が高いんだな

唐突に話が変わりますが、ダンスの先生が生徒によく言うこの言葉を知ってますか?
「胸ひらいて首を長く!手足も長く!」
「頭のてっぺんを糸でつられてるように!」

バレエをベースにしたダンスの基本姿勢は、身体の軸はキュッと中心に集めて(胃のあたりは開かない)、さらに上体は上へ上へ伸ばし、手足もながーく遠くに伸ばす、という感じなのですが、それをやってみると気づくことがあるんですよ。

「あ、わたし本当はもっと背が高いんだな」ってことです。

人ってどうやら、自分が思ってるよりずっと身体を縮こめて暮らしてるっぽい。特に現代人はスマホやPCの影響か、首が縮まって肩にめり込みがち。手足も付け根や関節を縮めがち。骨盤寝ちゃいがち。前述の先生の言葉に従ってみると、自分が数センチ、天に近づくのが分かるはず。

身体以外でもあるよそれ

別にいつだってバレリーナのようにスッ…!と姿勢を正そうってことじゃないんです。そりゃできたら素晴らしいけど、いつもは難しい。
ただ「本当は、自分が思うよりもう少しだけ背が高く、手足も首も長い」って知っておく方がいいと思うんですよ。努力してきれいにするとかそういう話じゃなく、そこに気づいとくの大事だなと。

肉体とか見た目のことじゃなくても、「自分は本来もう少しだけ◯◯だぞ」ってことを、意識する方がいいんじゃないかと思ったのです。

別に「いまはまだ本気出してないだけ」「俺は本来こんなとこにいる人間じゃない」的な虚勢方向じゃなくて、そこにちゃんとある良さを無視したり殺したりしない方がいいってことです。

だって私たちは自分で自分を勝手に縮こめて、過小評価してしまうから。その上、世間から求められる圧によってさらに曲がったり縮んだりしてる。みんながそうして少しずつ窮屈になる方が日本の社会は円滑に回るのかもしれないけど、その状態が自分の「素」である、とは決して思わない方がいい。

私たち、本来もうすこし色々「よい」んですよきっと。
だからなるべく背筋を伸ばして歩くようにしたい。たぶん歩いてきた道を振り返って数えてみれば、「よい」も「素晴らしい」も「魅力的」も、自分が思ってたよりはたくさん、転がってるから。

2025年、そんな感じでいきたいもんです。
ではまた!

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