★目から鱗のアフタヌーンティー【vol.31】

とりあえず、なんでも行ってみるもんだ。
近藤あゆみ 2025.06.09
誰でも

先日、父の七回忌法要を家族だけでちんまりおこなった。
父が亡くなったのは令和元年か。早いなあ。

そのあとの御斎(おとき)は「家族だけだから気軽なとこ決めといて」と母に言われ、弟が予約したのがホテルのアフタヌーンティーだった。

アフタヌーンティー!?
あのスコーンとケーキを山ほど食う糖尿まつり??(超偏見)。マジかよ!

女性客しか好まないと思っていた(超偏見)のに、弟がそこを選んだのも意外だった。
スイーツをさほど好まない私である。ケーキは四半期に一度くらいしか欲さない。小さなお菓子は食べるけど、少量でいい。
なので私にとって最も意味不明で、生涯利用することがないだろうと思っていたアフタヌーンティー。面白そうなのでわくわくして向かった。人生初体験だ!

絶景と飲み放題

ホテル最上階のラウンジにゆくと、そこは東京のまちが見渡せる絶景で、思わず「ウワーーー!」と大声を出してしまった。店内は9割、女性客だ。

メニューを渡され、最初に苦手なものやアレルギーの有無を聞かれる。それを告げるとちゃんと別のものを出してくれる。
メニューは決まってるけど飲み物は自分で選ぶ。なんと飲み放題だ!酒じゃないのに飲み放題!ものすごい種類の紅茶と、お茶と珈琲が少し。乾杯用にスパークリングワインが出たけど、アルコールは他にはない。なるほど。

そしてあの、オープン鳥かごみたいな三段のお皿に、色とりどりのアイテムが載った「アフタヌーンティーさま」がやってきた(正式名称を知りません)。
いちばん下の段にはポテトサラダや小さなサンドイッチ、お肉のピンチョスなどお惣菜系があってホッとした。スパークリングワインのお供だ。

中段と上段は、ケーキ、ヨーグルト、ゼリー、マカロンなどスイーツ盛りだくさん。6月なので紫陽花をイメージしたものが散りばめられていて可愛い。正直スイーツはこんなに食えんと思ったが、1つ1つが小さいのでいけそうな気もした。

「お席は三時間制ととなっております」と言われて仰天である。お茶でそんなに居ていいの!?太っ腹だな!

つもる話をしながら食べる。が、開始30分で下段の惣菜がなくなった時に気づく。これはあっという間にたいらげてはいけないものなのだ。皿がカラになっても「すいませーん、梅水晶」とか追加オーダーはできない。三時間、ゆったりとお茶をしながらちょこちょことつまむものなのだ。

途中、あたたかいスコーンが追加で来る。これが噂のクロテッドクリームか…!軽い!ふわっと軽いぞ。スコーンに口中の水分が吸い取られた感あるし無性に生ハムを上に乗せたいけど、なるほどおもしろい。

フレーバーティー、ハーブティー、季節の烏龍茶、煎茶…。お茶がなくなるたび、すかさずスタッフの方が来てくれてどんどん注文できる。どんだけ飲んでも酔わないのもいい(当たり前)。

気づき、ありすぎ

あまりに興味がない…というか好きな要素が見当たらなくて、これまでずっと「アフタヌーンティー意味わかんね」と思ってたけど、それはもったいないことだった。私はけっこう目からウロコが落ちたのだ。

ホテルなので景色も店内も美しく、接客も素晴らしい。席間もとられており、他人を気にせず座り心地のいいソファでゆったりとできる。
私たちは15時に入店した。ランチ後ディナー前の中途半端な時間帯(アイドルタイム)にも利用できるのは助かる。
これは飲食しながら長居してだらだらお喋りできる「ノンアル宴会(飲み放題つき)」である!

という気づきがあったから。

私の交友関係はこれまで男が多く、女友達も独身または既婚でも夜外出できる子ばかりだったので、会う時はほぼ「18時以降の飲み会」であった。
ところが最近、学生時代の女友達と会う機会が増えた。彼女たちは家のことがあり、集まりの開始が午前中〜夕方のあいだに限定される。私はこういう集まりに不慣れなため、お店選びにいつも苦労していた。

ランチだとレストランは予約できても食べ終わったら長居はできないし、どうしても二軒目(お茶できる場所)を確保する必要があった。休日の繁華街でカフェは予約できず、毎回「入れますように…」と祈る気持ちで向かったり、満席でさまよったりすることもあった。

でも、アフタヌーンティーならここだけでのんびりできるじゃないか!

話がはずんでも三時間は居られる。最初から金額は決まっているので「そろそろ追加注文しないと申し訳ねえ」みたいに気にする必要はない。飲みたきゃガブガブ飲める(茶を)。

「スイーツだから女性客が多い」とか短絡的に思ってたけど、こういう「昼間しか都合がつかない女たちの会」にめちゃくちゃ便利なんだ。だから女性が多いんだ!広いからベビーカーも置けるし!

辛党の私にとっては正直、食べたいと思うものはあんまり出てこない。でもいいじゃないか。飲み会はいつだってできる。実際、家族で長々といろんな話ができてすごく楽しかったし、母も過ごしやすそうだった。そう、シニアにとってもこの環境は安心できるのだ。

お値段は約七千円。一瞬「高っ」と思ったが、飲み会の会計ならおかしくない。場所と滞在時間を考えれば納得である。

ここまで書いて気づいたけど、そもそも「昼間しか外出できない」のが100%女性側というのも何じゃそりゃ?だな(社会的に)。
そしてお酒を飲ま(め)ない人たちは夜の飲み会のためにおうちの都合をつけたり高い割り勘を払わされたり酔っ払いの相手をしたり、または参加自体を断念したりすることの方が多いよね。マジョリティ側だと「そういうもん」みたいに収めちゃうけど。

ちなみに弟は既婚子持ち。アフタヌーンティーは妻と来るらしい。バイキングも好きなのでこういうホテルの催しにも詳しいようだ。やるじゃねえか。

なにごとも体験もせず愛好者の話も聞かずに勝手にイメージで決めつけたり、忌避したりしてはあかんのだ。それだと自分の視点は永遠に変わらない。
というか、そうやって参加する機会、気づく機会、楽しむ機会を排除していくのは人生もったいない…とつくづく思った午後であった。

ではまたね!

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