★勝手に後列に下がった結果。【vol.10】
昨年末初めて「やりとりほぼすべてオンライン」というお仕事があったのですが、私はそれに結構メンタルを削られました。誰が悪いとかでは全くなく、メッセンジャーアプリのみのコミュニケーションに不慣れで、性に合わなかっただけなんですけどね。「顔見て話したらお互い認識ぜんぜん違ってた!」ということが何度かありました。
そんな中、あるページのコピー、文言、全体構成、ラフを私が作ることになったのです。
通常ならページに欲しいイラストに関してはラフだけ描いてデザイナーさんにおまかせしますが、その時はイラストを描ける人がいなさそうだったので念のため(イメージを伝わりやすくするため)イラストも描き、データにして渡しました。
ところが納品したもろもろに対して、社長さんからのリアクションが「イラストが可愛い♡」の一言だったことに、私は引っかかってしまったのです。
依頼されたお仕事はコピーライティングなので、ことばの部分や全体構成についての感想や問題があれば聞きたい…という思いがありました。だから「絵が可愛い」だけってどういう意味だろ??と悩んじゃったんですよね。「ひょっとしてイヤミ…なのかな?それ以外に言いようがない出来ってこと?」と。
それまでのやりとりで齟齬が多かったことも影響していたし、「プロのイラストレーターでもない私のイラストはどう見ても下手くそだし」というそもそもの思いも大きかった。
文言や構成に関してはその後これという感想がなく、添削に近い修正依頼だけ来たということも相まって「この方は私の作るものをあまり気に入っていないのかも…」と思い込むようになりました。
そしてデザイナーさんにオリエンする際、私は「イラストは私が描いたものなので使用必須じゃないです。デザイントーンに合うものがあったらそちらを自由に使ってくださいね」と伝えました。
実際にデザイナーさんはもっと洗練された、洒落たイラスト素材を使って作ってくれたので、私はこれでよかったなと思いました。
その後ほぼ完成したページを確認してもらい、最終的に詰めてゆく段階で、社長さんとオンラインで話す機会がありました。すると社長さんがぽつりと言ったのです。
「近藤さんのイラスト、使わなかったんですね」
「あ…はい。私の絵は下手くそだし、トーンに合わないかもと思ったので」
「なるほど。確かにこれは洒落てますよね。でもこう…親しみやすさがあった方が(当社のサービスには)向いてるかなって。近藤さんのイラスト、可愛くて私は好きだったんだけどな」
アーーッ。
私は、ズガーンと撃たれたような気持ちになりました。
なんてこった。この方は私のイラストを本当にいいと思って言ってくれてたんだ、と。
私の作るものを気に入っていないという思い込み。自分の絵は通用しないという思い込み。
それらのせいで、私は何かいろいろなものを箱に押し込めたり、手から逃してしまってる!と思いました。
「自己肯定感」というのが一体何なのか、世間の定義づけや議論は色々ですが、「他人が気にいるわけがない」「自分なんて所詮こんなものである」という意識は自分の想定よりずっとずっと頑迷なのかもしれない。
一方(私の場合はことばの面)では変な自信があり、そこに触れられないことでプライドが傷つき、もう一方(イラストの面)では人の評価を信じられない。わああ…何とアンバランスなことか。
こういうこと、他にも山ほどあるのかも。
言葉の裏を読み取ろうとしたり、未熟さを肝に銘じてること自体は悪くないけど、そこを研ぎ澄ませてもあんまり幸せな結果にはならないんすよね。
自分が未熟であることの根拠を、他人の言葉の裏でもって補強しようと思うのは何というか、ずるい。
「褒められたら額面どおり受け取る」「変に卑屈にならない」方がハッピーなんだけど、そのためには、自分のアウトプット(己の外見とかも含めて)をためらわずさらけ出して、「はい、私はこのまんまでございますよー!」と居直るしかなく、それには覚悟がいる。
「いやいや私なんて!」と、色んなものを後ろ手に隠したままズサーッと後列に下がるのはラクなんだけど、永遠に居直れない。ずっと何らかの言い訳を用意できる位置にいるって、卑怯でもある。そういう意味での「ずるい」ですね。
でもさ、せっかく発してくれた小さな「好き」の声を「世辞だろう」「イヤミかも」と側溝に流してしまうのは、あまりにもったいないよね。
ではまた!
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