★あの頃、引きずってる?【vol.38】

自分的にはフツー、でも周りは違和感。こわいよー。
近藤あゆみ 2025.12.03
誰でも

まず最初にお知らせです!

お待たせしました。やっとこさ、自分のネットショップができました。現在、イベントでも販売したZINE2冊など通販しておりますのでよろしくお願いいたします!「Amiya」は店名です。


では今回のお話へ行ってみよー!

2012年の違和感

先日の飲み会で「続・続 最後から二番目の恋」がいかによかったか、という話になり、その場で唯一観ていない友人に「あなたならちょうど1stシーズンが年齢的に合うから観てみて」と皆で勧めた。
そしたら観てくれたらしく「千明がどんどん苦手になってきてるんだけど」というLINEが来たので笑ってしまった。

「なぜ千明はささいなことでずっと怒ってるの?」「あと真平がキモすぎる…いきなり下の名前呼びとか引く」という感想も、なるほどなーと頷けて面白い。我が家でも久しぶりに観返していて、同じようなとこで「オイオイ」となったもん。

主人公・千明は気分屋かつパワハラ傾向の強い上司ですぐキレるし、周りに怒りのケアをさせるし、“天使”である真平くんも女性との距離感が完全にヤバい。令和の今ならどちらもアウトだ。(45歳バリキャリ女の空回りぶりも年下イケメンのファンタジーぶりも、そもそも描かれ方がかなり戯画的、というのは前提にあるけど)。

私はリアルタイムで視聴し、その後「続」「続・続」と続いてゆく彼らの人生と併走してきたから初期の雰囲気をすっかり忘れてたけど、令和で初見の友人が違和感をバリバリ感じるのも無理はない。

2019年の違和感

先日宝塚でプリレジェこと「PRINCE OF LEGEND」を観た。
プリレジェは元々LDH(EXILEの事務所)が2019年に制作したドラマで、宝塚が舞台化した。「王子が大渋滞」というキャッチフレーズで、あらゆるタイプの王子(イケメン)がひとりの女子高生をめぐって恋愛バトルを繰り広げる物語だ。

イケメン王子たちは果音という女の子にあの手この手で接近するのだが、何も言わずにいきなりハグ、バックハグ、頭ポンポン、お姫様だっこなどをかますので、物語は知ってるのに驚いてしまった。

舞台自体はとても面白かったが、終演後に友人とお茶をしながら「不同意だったね…」「完全に不同意で触っててアウトだね…」と語り合った。
原作自体がトンチキとはいえ、ドラマ制作当時はまだ「相手の同意なく身体接触をしてはいけない」という考えは広く浸透はしていなかったのかもしれない。(既に浸透してたらごめんなさい)
私たち自身も即座に「不同意!」と思うようになったんだな、と思う。

ほんの数年で「その考えや姿勢はアウト」となるくらい、時代の進化は早いんだなと改めて思う。もちろんそれは喜ばしいことだ。

そして「あの時代の女」の違和感

テレビドラマは「しょせんフィクション」でもあるけど、その時代時代を生きる私たちがメディアや世間から放たれるメッセージに影響されていないとは言えない。いや、めっちゃ影響されてる。

ここまで長々と話してて何だけど、ドラマの話は前フリだ。私が最近ショックを受けたのは、我が国の首相のふるまいの数々だ。

尊大なおっさんの横でぴょんぴょん飛び跳ねてはしゃいでみせる。女性相手には「きゃー♡」とばかりに手を広げいきなりハグする。男性相手にはぐっと身体を寄せたり、肩を抱いたりする。それが彼女の「外交」であり「親しくなるためのコミュニケーション」だ。
市井の60代女性なら「人なつこいおばちゃん」で通ったかもだが、一国の首相としての態度としてはあまりにも「ナシ」であった。

政治家としての彼女に関して、私は「一刻も早く辞任して頂きたい」と思い続けているのだが、そこから切り離して彼女をあくまで個人として見た時、「わ、分かる…」と思った上に、己を振り返ってゾッとした。

今の50代くらいまでの女性なら理解してもらえるかもしれない。私たちが若かった頃、社会人として円滑にコミュニケーションを取る(しかも並みいるおじさま達と)というのは「ホステス的な立ちふるまい」と限りなくイコールの場合が多かった。飲み会ではお偉いさんの隣で必ずお酌、カラオケにゆけばデュエット。

そういう扱いやボディタッチにいちいちめくじらを立てることは「洒落が分からん」「無粋で」「子供っぽい」ことだった。男性たちがそう明言したわけじゃない。私たち自身がそういう時代の価値観をしっかり内面化していたのだ。嫌とか嫌じゃない以前に「そういうもん」だし、そういうもんを何でもなく受け止めるのが大人の女だと思ってた。

そのまま年を重ね、ホステス性が求められなくなる頃にはいつの間にか「こわいおばさん」としての存在感が増している。そうすると今度は「こわくないよ、あたしゃ気さくだよ」という気持ちを示したくて、昔とった杵柄でボディタッチ多めになったりする。スナックのママ的と言ってもいいかもしれない。「別にオンナとして意識されないだろうしこっちも意識してないし、まあ仲良くやろうよ」という感覚だ。


首相の件の態度を見て「男性社会であの手で出世してきたから有効だと思ってるんだろうね」という意見も多々あったが、私はそうは思わない。あれはもう「習い性」なのだ。
普段の彼女はたぶん本当に気さくなおばちゃんなのだろう。狙ってるというより、親しくなりたいと思った時には自然にああいうのが出ちゃうのだろう。そういう点においてのみ、彼女に同情をする。

だけどそれはTPOを間違えると強烈な違和感を引き起こすし、どっ引く人もたくさんいる。時代的にもアウトである。

なあ、私はあれをやっちゃってないだろうか。
というか、やっちゃってるかもしれない。多少の確信がある。

例えば親しい友人としこたま飲んだあと、めっちゃ楽しかったーーまたねー!の気持ちと共に別れ際にハグをするクセがある。男女問わずだが、あれはマズいのではないだろうか。それ以外でも、そもそも身体接触にあまり抵抗がないので色々とやらかしてるのではないだろうか。セクハラおじさんを諌められないではないか。ヤバい。気をつけよう…。

その時代の価値観を内面化して年だけ重ねてきた自分。そして時代の変化に添い切れてない自分。そんなことを気にしなけれはいけない年齢になったんだと痛感するのであった。(遅いよ)


ではまたね!

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