★「それな」が過ぎて衰えた。【vol.17】

多いと楽しい。でもあやうい。
近藤あゆみ 2024.06.27
誰でも

活字中毒者にとってTwitterは「読めども読めども、あとからあとから短い文章がわいてくる」という意味で最高のアイテム(?)なんですよ。

暗闇でも読めるし、読み終わるということがない。頭を使う必要もない。政治から生活に至るまで、あらゆる人のあらゆることばがそこにある。
実際Twitterで知った、一生の友になりそうな映画や本は数知れずなので、暴君イーロンによりどんどん荒れていこうが「結局ここが好き」って思うのです。

それでも最近「これは弊害だな〜」と顕著に思うことがあります。大きくまとめると「自分がどっかにいってしまう」ってことなんですけど。

もう少し細かく言うと、

①「反応することの方に特化してしまう」こと
②「言語化能力が衰える」こと

が問題なのです。

いつの間にやらリアクション担当

①は、リアクションがメインになってしまうって意味です。
ぼんやりタイムラインを眺めてるとあらゆる意見が飛び交っているので、自分がゼロから何かを書くよりも、既にそこにある声や問題提起に対して「それってこうじゃないか」とか「わーこれは楽しみ」とか、そういう「反応の言葉」ばかり書くようになってしまう。

もちろんTwitterに大義などないし、もともとが「渋谷なう」だの「あーつかれた」だのの呟きばかり漂ってた場所です。だから別に悪いことではないんだけど、わたし個人としては、いいことでもない。全部が他人の言葉の後追いになってしまうのでね。

まずは他人の言葉

②については、思ったことや意見を自分の中でかためてパッと出すことを、サボったりおそれたりするようになってしまったんです。ほとんど無意識ですけど。

例えば映画やドラマを観て「ワーッすばらしい!」てなったり、逆に「いまいち…」てなったりしたとき。いきなりそう書かずに、まっさきにタグをたどってしまうようになった。それはもちろん「同じものを観た人の感想を見てみたい」という気持ちですよ。でも、そこでいったん様子見というか、皆の空気感をうかがうようになってる。

また、私が信頼しているフォロイーさんたちや、めちゃくちゃ鑑賞歴の長い猛者たち(大河クラスタの皆さんとか)がまあ、素晴らしい感想や知識をたくさんあげているわけですよ。
そうなると「分かる…そう、見事なまでにそれ!」とか「ふむふむなるほど…私が思った違和感というのはそういうことなのか」とか、納得しておさまっちゃう。彼らの言葉の前に、私は自分の中に生まれた言葉を見失ってしまうのですよね。だから引用リツイートして「これすぎる」で終えたりして。

語彙を失ってる場合じゃない

ネットミームというか界隈独特の言い回しをマネして「語彙力消失ーー!!」とかやってるうちに、本当に語彙力がどっかいってしまったなと思います。これは焦ります。
語彙力というより「自分なりの言葉を組み立てて、自分の感情をあらわす」ことの手間を省くようになってしまった。

ことばを扱う仕事をする者として、ダメだなこれは…と思いました。

そんなことを思っていたら、ちょうど同じくらいのタイミングで、フォロイーであるヤギの人さんがこんなふうに書いてらっしゃいました。

クリックすると実際のツイートに飛びます

クリックすると実際のツイートに飛びます

まさに「これすぎる!」なんですけどね…。
これすぎる!で満足して終わっちゃうの、やっぱりやべえなって思うのです。引用元の方の文章もその通りだなーと思います。

「頭の中でぼんやり思ってたこと」は、別に無理やりどこかにあらわさなくてもいい。でも、あらわしたいなと思った時にはちゃんと自分ひとりで格闘して文章化しないと(それが訓練の必要な知的作業ってことですよね)、どんどんその能力や感性は衰えていくのだろうと思います。

身体の筋肉、表情筋、舌筋…そういう筋肉はどんどん使っていかないと、あっさり衰える。
加齢ゆえに衰えるんじゃなく「使うのをやめた」から衰える。知性、感性、思考力、語彙力とかもまったく同じだろうと思うのです。

あらゆる器官や感情は、下手くそでもいいから、自分の意思で自分なりに動かしていこう。動かさないほうがいいところなど、ないのだ。
近頃とてもそう思うので、SNSの使い方や距離の取り方を、もう少しクールにしたいなと思います。「虎に翼」とか観てると大変難しいんですけどね!

ふと気づいたこと

ひとつ面白いなと思うのが、同じ「誰かの書いたもの」でも、本だとこの現象が全く起こらないんですよね。何故なんでしょう。むしろ自分のための泉みたいになる。決して吸い込まず、湧く。

だから自分なりのオリジナルを見失ったなと思った時にはSNSを離れる。本とか絵とか、ひとの作ったものに(ネットを介さずに)触れる。
そうするとスイッチがカチリと入って、自分の中からことばとかアイデアとかが浮かんでくるんですよね。不思議だな。


ではまた!

無料で「よそみのあゆみ」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

誰でも
★髪型ひとつ。【vol.22】
誰でも
★うずまき理論。【vol.21】
誰でも
★味わう・つくる・ととのえる。【vol.20】
誰でも
★わたしたちは玩具〜「模倣犯」より【vol.19】
誰でも
★都知事選のあとで。【vol.18】
誰でも
喪服から感動へ。【vol.16】
誰でも
好きと嫌いの渡し方。【vol.15】
誰でも
修復の時期なのだ。【vol.14】